【VGC2021 Series9】 PJCS2021本戦シニア1位,マスター24位 エンテイロンゲ A to Z No.3
1.はじめに
この構築記事は,全3部構成の「エンテイ+オーロンゲ」構築の第3部となります。まだ第1部,第2部をご覧になっていない方は,そちらからご覧になることをおすすめします。
また,全3部構成の内容は以下の通りです。
- No.1・・・Series7(主な成績:シーズン12レート2008)
- No.2・・・Series8(主な成績:PJCS2021予選5位,レート1802)
- No.3・・・Series9(主な成績:PJCS2021本戦シニア1位,マスター24位)
それでは,今回も最後までご付き合い頂けると嬉しいです。
2.構築経緯
2-1.Series8での収穫
Series8で効果的であったオーロンゲの怖い顔,水ロトムのサイドチェンジ,ランドロスの剣の舞を継続させることで,Seires7の課題の大半が克服できると気付いたところから,自分のSeries9が始まった。
そして,Series7からSeries8にかけての配分の変更をランドロス以外に施さなかったことがSeiries9で活きており,実質「3シリーズ連続の全国ダブル」という感覚を作り上げることに成功した(この人は,ダイマックスを2回使うとか,1体限定の禁止伝説のポケモンを2体入れるとか,ルール違反をするのが好きですねw)。
2-2.ガラルファイヤーはイベルタルではない
ルールが変わり,イベルタルをガラルファイヤーに戻してみたところ,あらゆる課題が浮き彫りになる。
まず,ウーラオスの方がガラルファイヤーより速いということである。オーロンゲのリフレクターや光の壁(以下,壁)を多用するこの構築と確定急所技を覚えるウーラオスの相性は最悪であるため,ウーラオスに対しての解答をできるだけ多く用意しておきたいのだが,素早さの面で劣っているのは非常に厳しい。
次に,「初動火力の低さ」である。具体例を挙げると,命の珠持ちのC167ガラルファイヤーの燃え上がる怒り媒体のダイアークをダイマックス状態のレジエレキ,C+2でも進化の奇石持ちのポリゴン2に耐えられてしまう程の火力である(そもそもガラルファイヤーが相手の攻撃を受けて反撃するタイプのポケモンなので仕方がない部分もあるが・・・)。
以上の2つの理由から,ガラルファイヤーはイベルタルではないということが分かり,この構築のコンセプトに合わないことにようやく気付いた。しかし,ガラルファイヤーのお蔭で,Series8でのイベルタル構築で結果を残すことができたので,今までの時間が決して無駄でははなかったと考えている。
2-3.救世主マリン
ガラルファイヤーの代役を探すことになるのだが,このことが非常に難しかった。その理由をガラルファイヤーの役割をもう一度確認することで説明する。
この構築でのガラルファイヤーの役割は,以下の通りである。
- 特殊型でかつ通常時にも汎用性のある飛行技を覚える。
- 積み技を覚える。
- 全体技によるこの指止まれ or 怒りの粉の抑制(特にドラパルト展開)。
- 雨構築と殴り合う(?)。
- ウーラオスに強い(?)
VGC2018ルールの時もそうであったが,6体目のポケモンに要求する条件が多過ぎるのは,自分の力不足を痛感している。しかし,PJCS2021本戦(以下,本戦)の直前になって今まで考察してきた「エンテイ+オーロンゲ」構築を捨てるわけにもいかないので,多少の違和感は覚悟の上でガラルファイヤーを使用するつもりでいた。
ところが,「本戦の4日前」にマリン君(Twitter:@Yamyam_poke)が構築共有して欲しいと連絡をくれたことでこの構築に革命が起きる。もちろん,最初はガラルファイヤー入りの構築を提供して配分や簡単な立ち回りを伝えたのだが,マリン君がポケモン日本一決定戦2020で3位になった構築が「ウインディ+オーロンゲ」構築であったことを思い出し,その時にマリン君がどのような考えをしていたのかを理解するために,早速構築記事を見てみたところ,物理と特殊のダイジェット要因であるギャラドスとトゲキッス,高火力のゴリランダーとウオノラゴンという自分の構築との類似点が多い構築であった。
ここで,「レジエレキの存在でギャラドスが完全に活躍できなくなってしまったなぁ~」とVGC2020ルールの思い出に耽っていたところ,VGC2020ルールと比較して大分数が減ったが,たまにマッチングするピントレンズ(鋭い爪)持ちのトゲキッスがこちらの壁展開を抑制するため厄介であることを思い出した。もしかしてと思い,先程のガラルファイヤーの役割とトゲキッスを照らし合わせてみる。
- 特殊型でかつ通常時にも汎用性のある飛行技を覚える。
→エアスラッシュを覚える。 - 積み技を覚える。
→特性と持ち物により急所率が50%なので,相手の能力上昇を無視するという意味で実質積み技である(D+1のポケモンに急所を当てると,急所を当てなかったときと比べて2.25倍のダメージが入る)。 - 全体技によるこの指止まれ or 怒りの粉の抑制(特にドラパルト展開)。
→マジカルシャインを覚える(高い急所率により,積み技も抑制できる)。 - 雨構築と殴り合う(?)。
→キングドラに強い。熱風も覚えるため,天候を奪うことも可能。 - ウーラオスに強い(?)
→ウーラオスに強い(!!!)
まさかの完全一致である。しかも,ガラルファイヤーの短所であった「初動火力の低さ」もC種族値120と高い急所率で解決することができ,ガラルファイヤーを採用していた頃に厄介であると感じていた壁展開,瞑想やダイマックス技のバフによる能力上昇などの積み技1回では受けきられてしまう構築に対しても,トゲキッスで解決できるのも非常に優秀である(「こちらは壁展開するけど,あなたの壁展開や積み技はトゲキッスの急所で貫通するから安易にできませんよね?」という理不尽戦法となりますw)。
よって,この構築(ここ重要)でトゲキッスはガラルファイヤーの上位互換であることに「本戦3日前」に気付くことができ,マリン君があのときに連絡をくれなかったら,WCS2022の出場権の獲得はおろか,この記事を書くこともなかったと考えているので,マリン君は最高の救世主であった。本当にありがとう。
2-4.勝敗を分けた環境読み
本戦開催直前に6体が決まったので(毎回大会直前に構築が決まるのは何?),各ポケモンの技構成と配分の見直しをマリン君と急いで行って,万全の状態で本戦を迎えられると思ったが,この構築唯一の懸念事項が浮き彫りになる。それは,「メタグロス構築に薄くなってしまった」ことである。
構築経緯の2-3でガラルファイヤーの役割に「メタグロスに強い」という項目がなかった理由は,この構築は,基本選出の「エンテイ,オーロンゲ,メタグロス,水ロトム」の4体でメタグロス構築に戦えると考えており,それにガラルファイヤーが採用されているという感じであった。相手側も壁展開での水ロトムや弱点保険を持っている可能性が高いメタグロスに加えてガラルファイヤーもいたら,メタグロスで自分の構築を崩すことは困難であろう(※)。しかし,ガラルファイヤーの代わりにトゲキッスを採用したことで,メタグロスの選出を促す結果となり,さらに弱点保険を持っていることを考慮すると,プレイングへの負担が非常に大きくなってしまった。
よって,メタグロス構築に対しての勝率が怪しい構築になってしまったのだが,自分は,「本戦でメタグロス構築を使用する人は少ない」と読んでいた(結果は,大外れでしたが)。その理由は,「エンテイロンゲ A to Z No.2」でも記述したVictory Road様のVR Circuitの結果から「イベルタルが軽視されている」環境を読んで,PJCS2021予選で5位になった成功体験があったからである。
そこで,本戦1週間前(5/1~5/2)に開催された予選大会の結果を見てみる。
お分かり頂けたであろうか・・・。
今回もいちいちサイトを開くのが面倒な方のために,大会結果から分かることを簡潔に説明すると,「メタグロスのトップカット率がまさかの0%(0/20)」という衝撃的な事件が起きた。こんなにもメタグロスでは勝てない印象を大きく植え付けた大会が本戦1週間前に開催されて,「メタグロスを使う意味がない」からメタグロスに薄い構築になっても心配することはないし,「メタグロスを対策する意味もない」からこちらのメタグロスが通りやすい環境の本戦になると考えるのは,至極当然のことである。これで何かの間違いが起こらない限り,本戦のライブ大会の出場権を獲得できると考えたのだが,その間違いが起こってしまった。
自分が調べた限り,本戦で10人以上のプレイヤーがメタグロスを使用していた。この結果から,今まで自分が抱いてきた疑念が確信に変わったことがある。それは,「VGCルールは逆張りし得」ということである(言い方を変えれば,「環境を1周させるようにする」)。自分が使用する構築は,たいてい逆張りなのだが,今回以外で上記のことを大きく実感した大会は,「PJCS2018」と「PJNO2020」と「ポケモン日本一決定戦2020本戦」の3つである(このことを話し出すとキリがないので,また別の機会に)。
前回の「エンテイロンゲ A to Z No.2」の最後で「Victory Road様に裏切られた?」と大袈裟に記述したが,「良い意味で常識が通用しないプレイヤー(自分もその中の一人だと自覚しています)に翻弄された」というのが正確な表記である。構築で勝率を上げるタイプのプレイヤーである自分がこれらの人たちとの対戦するとき,こちらが上振れを引いて良い対戦になるレベルで終始苦しい展開になる。そこを上手く突かれた結果,あと1勝でライブ大会というところで負けてしまい,24位という成績で自分のVGC2021は終了した(後に,50位以内にWCS2022のDay1の出場権が付与されると発表があり,ギリギリ耐えました・・・)。
一方,マリン君はというと,本戦4日前に構築を渡したのにも関わらず,9勝1敗のレート1613のシニア1位でライブ大会の出場権を獲得したので(何で?),日本一の夢を託してシニアの環境に特化した「エンテイ+オーロンゲ」構築への調整に,約2ヶ月間全力を尽くすことにした(ちなみに,自分に連絡をする前は,「オーロンゲ+サンダー」構築かレジエレキ軸の構築を考えていたみたいです)。
以上の変更と従来の努力値を環境に合わせて変更したものが,Series9の「エンテイ+オーロンゲ」構築となります。
(※)
最近は,水ロトムに打点のある思念の頭突きや岩雪崩搭載のメタグロスも数を増やしてきたが,その技構成のメタグロスは,「気合いの襷持ちの悪ウーラオスを倒すのに2回の攻撃が必要」となるため,悪ウーラオスと水ウーラオスのどちらにも強いカプ・レヒレを採用していることが多い。もちろん,自分の構築にもカプ・レヒレを採用すると,ウーラオスに悩まされることは解決できるのだが,「エンテイロンゲ A to Z No.1」でも記述したとおり,この構築にカプ・レヒレを採用することはあり得ない。
なぜなら,「エンテイ,オーロンゲ,メタグロス,カプ・レヒレ」の選出において,地面技(特にダイアース)が一貫するからである。そして,「カプ・レヒレのC上昇技は1段階上昇の瞑想しかない」ため,ダイアースのバフやバークアウトなどの1段階の能力変化技で相殺されてしまう。水ロトムなら,ダイアースを無効化できる特性の浮遊と先にダイアースのバフを乗せられたとしても,2段階上昇の悪巧みで切り返すことが可能である。
その他にも,電気打点がないことやオーロンゲとタイプが被っていること,特性のミストフィールドがエンテイの聖なる炎の追加効果を阻害すること(Series7では,オーロンゲの電磁波も)など,カプ・レヒレが自分の構築ではマイナスに働くことが多いと考えた。
この文章は,PJCS2021ライブ大会が終わっての追記であるが,ベスト8のコウさん(Twitter:@kou_111111)の「エンテイ+オーロンゲ」構築には,拘り眼鏡持ちのカプ・レヒレが採用されていて,やっぱり瞑想は合っていないと確信を持つことができた(自分には,リスクリターンが大きい拘り眼鏡型のカプ・レヒレを採用する勇気がなかったのだが,トッププレイヤーが集まる大会では,いかに相手を出し抜くかが大事になってくるので,大変勉強になった)。
3.個別解説
「エンテイロンゲ A to Z No.1」と「エンテイロンゲ A to Z No.2」と重複するところは,省略している場合があります。
3-1. エンテイ
持ち物:マゴの実
性格:陽気
特性:精神力
実数値(努力値):H213(180)-A136(4)-B106(4)-C99-D104(68)-S167(252)
技:聖なる炎/地均し/バークアウト/守る
Series7・8と同じ個体を使用しました。
このポケモンの詳細は,前回・前々回の記事で既に記述していますので,まだ記述していなかった「レイスポスとの違い」を記述していきたいと思います。
当たり前の話をしますが,ポケモンは4つしか技を覚えることができません。しかし,レイスポスは,タイプ一致で打点となる「シャドーボール」とメタグロスが持っている弱点保険を能動的に発動できる「地均し」とエンテイとの差別化のための「挑発」で3枠消費するため,「守る」,「鬼火」,「バークアウト」の3つの技のうち,2つの技を諦めなければなりません。
この時点でレイスポスでは,この構築のコンセプトである「デバフによって,相手の奇襲をダイマックスを使用せずに凌ぐ」という最重要事項が実現不可能であることが分かります。ところが,エンテイは,50%の確率で「鬼火」に変化するタイプ一致で打点となる「聖なる炎」を覚えるため,技スペースの圧縮により上記のコンセプトを満たすことができます。
よって,レイスポスがエンテイより優れている点は,素早さのみであると考えていますが,その高い素早さもボルトロスやカミツルギ,ウツロイド等の少ないプールでしか発揮されないため,環境によってはほぼ無意味であると考えます。
以上より,この役割を果たすことができるポケモンは,エンテイ以外存在しないと考えています。
3-2.メタグロス
持ち物:弱点保険
性格:意地っ張り
特性:クリアボディ
実数値(努力値):H181(204)-A187(116)-B150-x-D110-S114(188)
Series7・8と同じ個体を使用しました。
このポケモンは,強い部分と弱い部分が半々あるポケモンだと思っています(例えば,弱点保険や命の珠を持たせると強い部分は攻撃面で弱い部分は耐久面となり,突撃チョッキを持たせると強い部分は耐久面で弱い部分は攻撃面となります)。なので,環境が進むにつれて,練度の高いプレイヤーでもこのポケモンを扱うのが難しくなるレベルだったので,本戦でメタグロスが少ないと読んだのですが・・・
3-3.トゲキッス
持ち物:鋭い爪 or ピントレンズ
性格:控え目
特性:強運
実数値(努力値)
H175(116)-x-B116(4)-C176(156)-D136(4)-S129(228) (PJCS2021本戦ライブ大会で使用)
H179(148)-x-B119(28)-C178(172)-D136(4)-S120(156) (PJCS2021本戦で使用)
配分について
【PJCS2021本戦】
火力に関しては,ガラルファイヤーと同じく,臆病にしてもウーラオスより遅いため,控えめであることは確定で,控えめにするならC実数値172(臆病C252振り)より高い数値が欲しかったため,C実数値176を最低ラインとして考えた。素早さに関しては,ある程度の耐久は欲しかったため,最速化身ボルトロスをS+1で抜くことができる数値で十分であると当時は考えていたので,S実数値を120に設定した。
【PJCS2021本戦ライブ大会】
シーズン18(2021年5月)の終盤に,じーんさん(Twitter:@zeen172M)が本戦の構築を公開した後にアタッカー型のトゲキッスが流行し,ミラーで負けたら仕方がないくらいに素早さを上げました。
水ロトムと同様,痒いところに手が届くポケモンであると考えています。
技については,タイプ一致技であるエアスラッシュとマジカルシャインは確定,「炎タイプではないポケモンに炎技を搭載すると,完成度が高い構築になる(参考記事:VGC2015ルール,VGC2018ルール)」という持論から高い急所率を考えて全体技の熱風,この指とまれと守るを圧縮した技であるサイドチェンジを採用しました。
3-4.水ロトム
持ち物:オボンの実
性格:控え目
特性:浮遊
実数値(努力値)
H148(180)-x-B128(4)-C160(164)-D128(4)-S126(156) (PJCS2021本戦ライブ大会で使用)
H152(212)-x-B128(4)-C154(116)-D128(4)-S128(172) (PJCS2021本戦で使用)
技:ハイドロポンプ/10万ボルト/悪巧み/サイドチェンジ
マリン君と相談して,ライブ大会前日に配分を変更しました。今まで何となくC実数値154で使用し続けていましたが,果たして本当にその実数値が最適解であるのかと疑問に思ったからです。
10万ボルト+ダイサンダーでH156D128の水ロトムをオボンの実を発動させずに倒せるC実数値160,ライブ大会でウオノラゴンにはマッチングしないだろうと断定して,S+1で最速エースバーン抜きのS実数値126,C154ロトムの10万ボルトを最高乱数2連続引いても耐えられるギリギリの偶数のH実数値148に設定しました。
3-5.霊獣ランドロス
持ち物:命の珠
性格:意地っ張り
特性:威嚇
実数値(努力値):H189(196)-A187(36)-B111(12)-x-D102(12)-S143(252)
技:地震/岩雪崩/空を飛ぶ/剣の舞
個人的にランドロスに命の珠を持たせることは気に入っています。理由としては,Series8で使用した白いハーブ(ラムの実)といった相手依存の持ち物を使用することに抵抗があったからです(単に扱うのが下手なだけだと思います・・・)。しかし,命の珠は威嚇を入れられても単体性能がそこまで失われることはないですし,威嚇を入れられなければ大暴れすることができます。ちなみに,本戦で熱風火傷を引いたランドロスをダイマックスさせて勝った対戦もあったので,この持ち物で正解だったと思います。
配分は,S+1で最速ドラパルト抜きのS実数値143(性格が陽気や準速ミラーが頻繁に起こっていたことは存じ上げていましたが,壁展開の構築で火力を下げるのは,構築のコンセプトに反すると考えました),11nとなるA実数値187は確定で,知り合いとの対戦で発覚したダイマックスで拘りハチマキ持ちの水ウーラオスの水流連打が確定耐えになるH実数値189とB実数値112(H実数値が10n-1であるのも〇),ダイアースのバフにより偶数だと嬉しいD実数値102に設定しました。
「エンテイロンゲ A to Z No.1」でも記述しましたが,この枠にポリゴン2を採用している構築との一番の違いは,「レジエレキの選出を躊躇させる」ことが大きいと思います。それは,本戦直前にフレ戦をしてくださった方からもそのような話が挙がりましたので,この枠は霊獣ランドロスが正解であると信じています。ちなみに,ガブリアスでない理由は,ダイジェットができないからです(詳細は,選出の方で記述します)。
3-6.オーロンゲ
持ち物:光の粘土
性格:慎重
特性:悪戯心
実数値(努力値):H201(244)-A141(4)-B109(188)-x-D113(60)-S82(12)
技:ソウルクラッシュ/怖い顔/リフレクター/光の壁
Series7・8から若干配分を変更しました。
ミラー対面意識,S+2で最速ウーラオス,S+1でS+1で準速レイスポス抜けるポケモンを抜けるS実数値82がマストだと考え,それによってB実数値が1低くなりましたが,A205メタグロスのアイアンヘッドを15/16(A204なら確定耐え),命の珠持ちのA198霊獣ランドロスの地震媒体のダイアースを15/16,A192までのメタグロスのアイアンヘッド媒体のダイスチルをリフレクター補正で15/16なので,そこまで困ったことはありませんでした。
また,C189トゲキッスのダブルダメージ補正のマジカルシャインを急所でも15/16で耐えるため,D実数値113は変更していません。
4.選出
選出について記述する前に,皆さんに伝えておきたいことあります。それは,エンテイの持ち物についての個人的な解釈についてです。
自分もそうなのですが,VGC2021のルール(特に,Series7・9)が難しいと多くの方が感じたのではないでしょうか。その大きな理由として,「VGC2021ルールは,基本選出が存在しないルール」と考えました。そして,その諸悪の根源は,「レジエレキ」と「ウーラオス」の2体のポケモンの存在です。例えば,「トリックルーム+ブリザポス」構築にメタグロスと水ロトム,「フシギバナ+コータス」構築に霊獣ランドロスとエンテイを中心に展開したいところなのですが,上記の2体がその展開を阻害するところか壊滅的にしてきます。
今までのルールなら,VGC2020ルールでは「バンギラス+ドリュウズ」構築の対策であるローブシン,VGC2018ルールでは「ゲンガー+ガオガエン」構築の対策であるキリキザンなどのポケモンは,相手側にとっては辛いポケモンであってもプレイングで捲ることが可能でした。しかし,「レジエレキ」と「ウーラオス」の2体を1体で止めるポケモンが存在しないかつ共にダイマックスを使用せずに盤面を壊滅的にしてきますので,今までのダブルバトルではあり得なかった「出し負け」が存在する難解なルールであったと解釈しています。
よって,先発にどのようなポケモンが繰り出してきても,初手ダイマックスをされても,初手トリックルームをされても,初手追い風をされても対応できる先発の2体のポケモンが必要であると考えた結果,先発「エンテイ+オーロンゲ」に辿り着き,「エンテイに守るが絶対に必要である」と考えた訳です。
恐らく,「突撃チョッキ持ちのエンテイ+オーロンゲ」構築は,「本当に刺さっている構築にしか選出しないのでは?」と考えています。構築経緯でも記述した通り,プレイングが勝率を上げる要因であると考えているならば,突撃チョッキ持ちのエンテイの方が最適だと思います。実際に,マリン君に聞いてみたところ,基本選出が定まっている構築の方が使いやすいと言っていたので,シニアカテゴリーを安定して勝つ抜くことを意識するなら,自分の「エンテイ+オーロンゲ」構築を貫き通したのは正解だったと信じています。
これから記述する選出は,先発に「レジエレキ」と「ウーラオス」が繰り出された場合を無視した選出を記述する可能性がありますのでご了承ください(勝率が怪しくなるだけで勝てないという訳ではありません)。
4-1.基本選出(壁展開)
先発
後発 or or or
VGC2021ルールでずっと使い続けてきた戦術です。
相手側からしたら,誰がダイマックスするかが分からないことと,それに気を取られてサイドチェンジを読む余裕がないことの2点が大きな強みである選出です。
4-2.基本選出(メタグロスビートダウン)
先発
後発 or or
言わずと知れた弱点保険ギミックの選出です。
環境終盤には,弱点保険持ちのメタグロスの個体数が減少していたこともあり,この選出を無視(切っている)構築も少なからずありました。
4-3.基本選出(最大パワー)
(構築によって先発に繰り出すポケモンが変わる)
壁やデバフを凌駕するような火力を序盤から出すような構築に対しては,アタッカーで選出を固めていきます(場合によっては,オーロンゲも選出することがあります)。
こんなにもあからさまに殴り合いで解決しそうな選出からのサイドチェンジを相手が読める訳がありません。
4-4.先発レジエレキ+悪ウーラオス一点読み
先発
後発
1ターン目に「トゲキッスにサイドチェンジ+ランドロスに地震」を選択してゲームを終わらせます。環境終盤は,水ウーラオスの数が急増したため,この選出をあまりできませんでした。
4-5.フシギバナ+コータス
先発
後発 + or
9:1の比率で,とても有利な構築です。
フシギバナがダイマックス1・2ターン目にダイアシッド,3ターン目に巨大鞭撻を選択することだけを気をつければ良いので,1ターン目のオーロンゲに「光の壁ではなくソウルクラッシュをフシギバナ」に選択することがポイントです。
4-6.トリックルーム+ブリザポス
先発
後発
7:3の比率で有利な構築です。
わざとトリックルームを促すプレイングを行い,トリックルームが終了直前と直後のターンに一気に高火力を叩き込みます。練度の高いプレイヤーは,ブリザポスでダイナックルを多用してくるので,サイドチェンジや交代などの受け身の行動をできるだけ取らないように気をつけていました。
4-7.セキタンザン
先発
後発
8:2の比率で有利な構築です。
水ロトムと霊獣ランドロスのどちらもセキタンザンに有利なので,セキタンザンは1ターン目から動くことはできません。なので,セキタンザンの隣にいるドラパルトの鬼火やウーラオスの水流連打で,霊獣ランドロスだけでも何とかしようという行動が見え見えなので,1ターン目に「水ロトムにサイドチェンジ+霊獣ランドロスにダイジェットをドラパルト(水ウーラオス)」に選択して勝ちです。
上記の行動を行うために,ガブリアスではダメだったという訳です。
4-8.レイスポス
先発
後発 or or
6:4の比率で有利な構築です。
相手の先発は,主に「レイスポス+水ウーラオス」と「レイスポス+トゲキッス」の2パターンに分かれます。
「レイスポス+水ウーラオス」の場合は,1ターン目に「エンテイに地均し+オーロンゲに怖い顔をレイスポス」に選択します。このターンに,エンテイまたはオーロンゲのどちらかは倒されてしまいますが,死に出しで繰り出されたトゲキッスまたは霊獣ランドロスが両者の上を取っているため,ダイジェットでカウンターを決めて行きます。
「レイスポス+トゲキッス」の場合は,相手視点でオーロンゲの行動回数を減らしたいはずなので,トゲキッスの行動は「マジカルシャイン」が有力であると考えています。よって,1ターン目に「エンテイにバークアウト+オーロンゲに怖い顔をレイスポス」,2ターン目に「エンテイに守る+オーロンゲに光の壁」を選択すれば,レイスポスのダイマックスターンを消費できるため有利だと思います。
4-9.雨
先発
後発 + or
トゲキッスのお蔭で,相性が2:8から4:6の比率まで回復しましたが、それでも不利な構築です。
滅びの歌や催眠術が絡んでくると択になりますが,オーロンゲの挑発を無視するのは止めてください。ちなみに,怖い顔は読まれなかったです。
4-10.ドラパルト+ピッピ
先発
後発 + or
6:4の比率で有利な構築です。
リフレクターを貼ると,手助け+命の珠持ちのドラパルトのゴーストダイブ媒体のダイホロウを通常時でも耐えることができますので,1ターン目に「トゲキッスにマジカルシャイン+オーロンゲにリフレクター」,2ターン目に「トゲキッスにサイドチェンジ+オーロンゲにソウルクラッシュをドラパルト方向」に選択すれば,ドラパルトのダイマックスターンを消費できるため有利だと思います。
「ドラパルト+テラキオン」構築の場合は,1ターン目に「トゲキッスにマジカルシャイン+オーロンゲに怖い顔をテラキオン」に選択すればゲームになりますが,若干怪しいです(4:6の比率くらい)。
4-11.カメックス+ボルトロス
先発
後発 + or
4:6の比率で不利な構築です。
1ターン目に「水ロトムにサイドチェンジ+オーロンゲに光の壁」を選択して,化身ボルトロスの怪電波とカメックスの巨大砲撃を両方ケアできると勝機はありますが,相手依存のプレイングなので怪しいです。
4-12.#フジタのエースバーン
先発
後発 or or
構築の中身が分かっていても3:7で不利な構築なので,流石PJCS2021ライブ大会全勝優勝の構築ですね。
オーロンゲの怖い顔が鍵となるマッチアップであると考えているので,1ターン目に勇気のオーロンゲ→霊獣ランドロス引きも視野に入ってくると思います(このプレイングをしている時点で勝ち目がないとは思っているのですが・・・)。
※
このルールは,構築のアーキタイプが多すぎるため,一部省略した構築もあります。
記述していない構築に対しての選出を書いて欲しいときは,追記をしますので連絡を下さい。
5.苦手な構築またはポケモン
※ 選出択になる構築は,省いています。
- レジギガス+(ガラル)マタドガス 構築
オーロンゲが完封されていて,この構築で素早さが高いエンテイとレジギガスが同速なので,同速勝負に勝って,聖なる炎で火傷にさせないと厳しいです(その確率は19/80)。 - 水ロトム
カプ・レヒレと違い,悪巧みをバークアウトやソウルクラッシュで相殺することができません。このことを利用して悪巧み1点読みでバークアウトとソウルクラッシュを水ロトムに集中攻撃できれば,ダイマックス適正が失われるため,勝機はあります。 - メタグロス
切っています。弱点保険持ちでなければ勝ち目は普通にあります。
- 猫騙し搭載のオーロンゲ
多種多様な技を覚えるため,猫騙しまでケアすることは不可能といっても過言ではありません。また,トリックまで考慮すると,メタグロスを先発に繰り出しにくいのも辛いです。 - ウツロイド入りの構築
ウツロイド自体は,「エンテイのダイアース+オーロンゲの怖い顔」という最強の初見殺しで倒すことができますが,ダイマックスをエンテイに使ってしまうので,相手のダイマックスをどう凌ぐかが難しいマッチアップです。 - モロバレル
毎回言っていますが,マジでやめてください・・・。
6.Series9の成績
コウヘイ
- PJCS2021本戦マスター24位(WCS2022Day1出場権獲得)
マリン
- PJCS2021本戦シニア1位(PJCS2021ライブ大会,WCS2022Day1出場権獲得)
※この画像しかなかったみたいです。申し訳ありません。
7.サイドチェンジについて
ご覧の通り,この構築には3体のポケモンに「サイドチェンジ」が搭載されており,好ましくなく思われても仕方がないと思っています。しかし,自分がサイドチェンジを「確率論」に基づいて採用したことを皆さんにお伝えしたいので,このコーナーを設けさせて頂きます。
自分は,VGC2020ルールの構築記事で「読まれないサイドチェンジは強い」と記述している通り,VGC2021ルールでもその理論が通用すると考えて生まれたのがサイドチェンジを搭載しているアタッカーである「メタグロス」と「トゲキッス」,「水ロトム」でした。「エンテイロンゲ A to Z No.1」の記事で記述した通り,この構築でサイドチェンジを搭載することへの欠点は,ほとんど解消できていますので,採用しない訳がないということです(もっと言うと,採用しないと敗退行為であるに等しい)。
8世代になって「構築<プレイング」で勝率を上げる環境に変貌したことで,数十手の選択が行われる1つの対戦の中で,1手間違えただけでも一気に負けに繋がるという「プレイヤー負担の大きい対戦」が増加したため,「1手でもプレイヤーを楽にさせる手段が欲しい」と考え始めるようになりました。その手段は,「眠り粉」や「絶対零度」,「先制の爪」など色々ありますが,成功率の観点から考えると,「サイドチェンジ」が一番安定する手段となります。
確かに,自分も「サイドチェンジはズルい」ということは理解しています。しかし,ポケモンにはもっとズルいことがあることを皆さんは忘れていませんか。そう,「急所」や「追加効果」などですよね。この構築の「サイドチェンジ」は,ただ単に致命傷を避けるためだけではなく,それらの可能性をゼロにするためでもあるということも知っておいて下さい。
プレイングミスがないという前提での壁展開の構築は,「急所」や「追加効果」を1回も引かなければ,ほとんどの構築(流石に全対応は厳しいので)にも勝てるというのが大きな強みです。なので,皆さんから好ましくない戦法だと思われても,「勝つ」ためには仕方がなかったのです。
話は変わりますが,自分も7世代では「サイドチェンジ」という技が嫌いでした。しかし,ダイマックスが中心となる8世代の対戦は,そんな変な拘りを持っていたら勝てないと考える程,難しかったです。もちろん,綿密な考察により「サイドチェンジ」以外に必要な技があれば,搭載する必要はありませんが,「ただサイドチェンジが嫌いだから」や「サイドチェンジを使うと嫌われる」というような考えでVGCルールを戦い抜くのは非常に厳しいと考えています(サイドチェンジに限ったことではありません)。
これは,あくまでも個人としての見解なので,何か疑問や不明な点がある方は,気軽にTwitterやこのブログに連絡を下さるとありがたいです。色々な方の意見を聞いてみたいです。
8.最後に
いかがだったでしょうか。
この構築記事をもって,3シリーズに渡り考察してきた「エンテイ+オーロンゲ」構築は,大団円を迎えました。自分とマリン君は,WCS2022の出場権を獲得できたので,この構築と心中したことは間違っていなかったのですが,2人ともあと一歩のところで勝ちきれなかったので,そこは来年の課題として精進したいと思います。
そして,VGC2021ルールを共に駆け抜けてくださった「Pokemon VGC Community」のメンバー,応援して下さった皆さんには多大なる感謝の意を表して,この構築記事を終えたいと思います。
ここまで見て下さってありがとうございました。