【VGC2019 Sun Series】 US・UMリーグ シーズン13 WCSレート 7位(レート1866) 「Surprise Xerneas+Yveltal」
VGC2019のサンシリーズで使用した構築を紹介します。
構築経緯
- < < < <
時期:2016年11月(7世代開幕直後)
自分は,禁止伝説のポケモンが使用できるルールで,消去法で禁止伝説のポケモンを選択することがよくある。このことをVGC2016で使用したカイオーガ+レックウザの構築を例に挙げて説明する。
VGC2016では,ジオコントロールという最強の積み技を覚えるゼルネアスとゼルネアスが苦手なポケモンの多くに有利なゲンシグラードンの組み合わせ,いわゆるBIG系統の構築が環境初期から終盤まで猛威を奮っていた。自分がその構築の強力さを理解しているのに,使用しなかった理由として,ミラーに対して自信のある解答が出せなかったからである。
ゼルネアス+ゲンシグラードンの構築は,分かりやすい強さが売りなので,レートの高低を問わずに,よくマッチングする。よって,同速勝負を仕掛けなければならない場面が他の構築より明らかに多くあるので,そのことに向き合う勇気やそれを覆せるプレイングスキルが自分になかった。これが一番大きな理由だったので,ゼルネアスとグラードンは候補から外れた。
次に,無天候の構築では,相手のゲンシグラードンに思う存分に暴れられてしまう場面が多発して,プレイングが歪んでしまうので,ゲンシグラードンと同等の特性を有するゲンシカイオーガまたはメガレックウザの少なくとも1体は採用すべきであると考えた。ゲンシカイオーガは,ゼルネアスより素早さ種族値が低いので,先攻でジオコントロールを選択されて,強力な水技を簡単に受けられてしまったり,ゼルネアスと一緒の構築に組みこまれていることが多いゲンシグラードンの特性の終わりの大地によって,妨害される場面が多いことが気になったりしたので,メガレックウザを禁止伝説の1枠目に選択した。
しかし,ゼルネアスやグラードンより個体数が少ないとは言っても,いざ,レックウザでミラー対面したときに,「同速勝負に勝つ前提で考える」といった考えは,あまりにもふさわしくないことやレックウザの天敵であるメガレックウザより素早さ種族値の高いメガボーマンダや特性の悪戯心で意地でも妨害してくる化身ボルトロスへの対抗策として,マニューラを採用することで解決できた(流石に,個体数が少ないマニューラのミラー対面は,同速勝負に勝つ前提で考えさせて下さい・・・)。
これで,先発マニューラ+レックウザという最強の並びができあがった。マニューラに搭載している叩き落とすや命の珠持ちのメガレックウザの破壊力により,相手のゼルネアスがジオコントロールを選択し辛くなったが,ゼルネアスは,この2体に対して,ジオコントロールを使用しなくても一撃で倒すことができるので,どうしても序盤の行動が択になってしまうことが気になった(6世代では,メガシンカ後の素早さ種族値がすぐに適用されなかったことも大きく影響)。
なので,ゼルネアスの攻撃(もし,行動を読まれてジオコントロールを選択されることも想定)を受けられるポケモンがこの構築に求められた。そのポケモンは,ゼルネアスの攻撃に耐性があるだけではなく,ゼルネアスに対してジャイロボールという大きな打点を有し,加えて,ゲンシカイオーガにも強いナットレイにすぐ決まった。あとは,ゲンシグラードンへの明確な対抗策があれば,あらゆる構築に対して戦っていけると考え,強い雨状態のナットレイの強さに考察段階で気付くことができたので,ゲンシカイオーガを禁止伝説の2枠目に選択した(クロバットとメガゲンガーの採用理由については,上記の記事で詳しく記述しているため省略)。
以上の経験を踏まえて,7世代で使用する2体の禁止伝説をVGC2017ルールの考察に行き詰まったときの気分転換として考察していた。
サン・ムーンで新たに追加された禁止伝説は,10%フォルムのジガルデ,特性がスワームチェンジの50%フォルムのジガルデ,パーフェクトフォルムのジガルデ,コスモッグ,コスモウム,ソルガレオ,ルナアーラ,ネクロズマの計6体(8種類)である。
この中で,フェアリー技に耐性があり,高火力の鋼技を覚えるソルガレオ,特性のファントムガードにより多くの場面で行動保証があるルナアーラは,誰もが注目していたポケモンであろう。特に,明らかにゼルネアスに殺意のあるソルガレオというポケモンの登場により,VGC2016のゼルネアス環境に一石を投じることになったのは間違いなく,「とりあえず,ゼルネアスを構築に採用しておけば,何とかなるだろう。」と安易に考える人が少なくなったことを見込んで,7世代はゼルネアスを使用することに決めた。
前後の文だけ見ると,明らかに矛盾している考えだが,ここで,上述のVGC2016での禁止伝説のポケモンの選択についての記述を思い出して欲しい。自分は,ミラー対面の多さに対して言及したのであって,決してメタに対して言及したわけではない(今思えば,ゼルネアスを使用しなかったことで,当時,どこから来るか分からないレッドカードや電磁波,吠える等の露骨なメタに精神を削られなくて良かったですが・・・)。しかも,自分は,「ゼルネアスより素早さ種族値が低い」,「グラードンやカイオーガ,そしてイベルタルに弱い」,止めを刺すように,「対極の禁止伝説であるルナアーラに弱い」という3点からソルガレオはゼルネアス構築の対策とは言えないと考えた(当時,メタグロス(アローラのすがた)と揶揄されたのも,今では懐かしい話ですね)。
そもそも,皆さんは,ソルガレオよりルナアーラのことに注目していたはずである。特に,VGC2016でトリックルーム構築を使用していた人は,ルナアーラの登場に衝撃を受けたと考える。誰もが7世代でのルナアーラの使用率の増加を予想していると考えたので(新たに登場した禁止伝説であるから,1度は使用してみたいという好奇心も考慮して),特性のファントムガードを貫通してルナアーラを倒すことができるイベルタルを禁止伝説の2枠目に採用した(ソルガレオに強いのも〇)。
6世代の頃のイベルタルは,ゼルネアスの使用率の高さに陰を潜めていたが,グラードンやカイオーガ,レックウザと互角に戦えることを評価していた人は多いと考える。7世代でソルガレオやルナアーラ,カプ系統の登場により,本来より1世代分遅れはしたが,イベルタルが相対的に強い環境に変化した。きっと,イベルタルもこの時を待っていたであろう。
また,イベルタルの持ち物について,6世代はガルーラやファイアロー,ダークホール搭載のドーブルの影響でトリックルームの構築が肩身の狭い思いをしていた(ゲンシグラードンやゲンシカイオーガの種族値の高さで強引に解決していた印象)が,7世代でそれらが弱体化されたので,トリックルーム構築をより意識する必要があると考えた。つまり,トリックルームを覚えるクレセリアやドータクン,ゴチルゼル等を一撃で倒さなければならないので,アクZを持たせた(不意を付きにきたソルガレオやルナアーラのトリックルームを阻止できるのも〇)。 -
上述より,トリックルーム構築への対策の1つとして,イベルタルにアクZを持たせたが,それだけではあまりにも危険だと判断したため,トリックルーム構築を強く意識することを念頭に置いて,取り巻きの考察を始めた。
持ち物や特性を除き,トリックルームを完全に阻止する方法は,「挑発,猫騙し,吠えるまたは吹き飛ばし,キノコの胞子,トリックルーム読みトリックルーム,トリックルームを搭載させたポケモンで封印」の6項目(間違っていたらすみません)だが,相手依存にならないことと汎用性が高いことを評価して,挑発と猫騙しを構築の中に組みこむことにした(キノコの胞子はトリックルームをされた後に使用するイメージ)。この枠は,特性の精神力と高いS種族値で行動保証があり,怒りの前歯や追い風,黒い霧といった優秀なサポート技を覚えるクロバットとゼルネアスとイベルタルが苦手とするレックウザに強く,特性のプレッシャーで相手の持ち物の判別に貢献したり,イベルタルのダークオーラを利用して,ソルガレオやルナアーラ,クレセリアを始めとしたトリックルームを覚えるポケモンに大打撃を与えたりできるマニューラにすぐ決まった。これで,先発マニューラ+クロバット,後発ゼルネアス+イベルタルの基本選出ができ,残りの2体の考察の前に,マニューラとクロバットの持ち物と技を決めることにした。
この2体は,VGC2016ルールでも使用しており,その強さを誰にも負けない程熟知していたが,7世代で新たに登場したカプ・コケコとカプ・テテフにより,その強さに疑念が生じる事態となってしまった。これにより,クロバットには気合いの襷,マニューラには倒される前に倒すという精神で,命の珠を持たせなければならなくなった。当時は,クロバットの気合いの襷をあまり考慮されていなかったが,環境が進むにつれて,多くの人が「どうせ,クロバットは気合いの襷を持っているから,1ターン目にマニューラを狙って倒した方が良い。」と気付くと考えたため,マニューラに守るを搭載した。
これで,1つ問題を解決できたが,このままだとマニューラの技構成が「氷柱落とし,叩き落とす,猫騙し,守る」となってしまい,クロバットの怒りの前歯と重ねた攻撃が,グラードンやカイオーガ,ディアルガ等の高種族値のポケモンに耐えられて,返り討ちに遭ってしまう問題が新たに発生したが(結果的に,先発マニューラ+レックウザという最強の並びができたので,良かったですが,VGC2016ルールでは,先発マニューラ+クロバットを繰り出すことはあまりなかった),DJさんがバトルロードオブグロリア2016の本戦で使用されたダメ押し搭載のマニューラによって,すぐに解決できた(耐久振りのゲンシグラードンには耐えられてしまうので,注意しましょう)。その記事を初めて見たとき,天才だと思ったのと同時に,マニューラをずっと使用してきたのに,なぜ思いつかなかったのだろうと虚無感に襲われた。
また,怒りの前歯がルナアーラに無効だったので,クロバットの挑発をクロスポイズンに変更した(挑発も欲しい技ではあるが,トリックルームに対して過剰なメタを張っていると感じたため)。
これで残りの2体の考察に移ることができ,ボーマンダやギルガルド,ゲンガー等のポケモンを色々試してみたが,その当時は正解が導き出せなかった。そうしている間に,VGC2017ルールが盛り上がってきたので,一旦考察を中断した。 -
<
時期:2018年3月
月日は流れ,時代はVGC2018ルール真っ只中のある日,衝撃的なニュースが舞い込んできた。特性が威嚇のガオガエンの解禁である。
VGC2018の記事でも,特性が威嚇のガオガエンが初期の頃に使用したガルーラ+クレセリア+テッカグヤ構築に大打撃を与え,ショックを受けたと記述したが,実は,最強だと考えていたマニューラ+クロバットの並びが特性が威嚇のガオガエン1体により,簡単に崩壊したことの方がショックであった。ちなみに,ガオガエンはわりと軽いので,怒りの前歯+命の珠持ちのA-1のマニューラのけたぐり(威力80)でも倒せないのも結構ショックだった。
その現実を受け止めきれられずに,禁止伝説が使用できるダブルバトルへの考察を放棄してしまい,6月にPJCS2018が控えていたということもあり,しばらくはVGC2018ルール1本に集中することにした(そう言いながら,PJCS2018直前のインターネット大会には真剣に取り組んでいた)。
-
→
時期:2018年7月下旬
PJCS2018での好成績でWCS2018への出場権を獲得したが,WCS2018まで残り1ヶ月を切ったのにも関わらず,まだ使用する構築の方向性が定まっていない中,後にスタッフとして参加させて頂く南白オフの開催のお知らせが飛び込んできた。そのメインルールは,後に開催されるインターネット大会のアンリミテッドトライアルのルールであった(PJCS2019とWCS2019のルールは,2019年1月に解禁するナゾの実,ミクルの実,イバンの実,ジャポの実,レンブの実の5種類の木の実と2019年3月に解禁する特性が負けん気のナゲツケサル,特性が強制のヤレユータンが使用できるため,正確な表現ではない)。
WCS2019のルールが禁止伝説のポケモンが使用できるルールであると予想していたものの,「3」で記述したことが大きく影響して,WCS2019のルールが発表されてから取り組もうと考えていた(当時は,毎回前年の11月頃にルールが発表されるので,WCS2019も同じ流れだと勝手に決めつけて,一足早く考察を進めている人たちに遅れを取っても巻き返すことができると判断した)。しかし,考察不足でオフ会に臨むことは絶対にしたくなかったので,重い腰を上げてWCS2018と並行して考察を進めることにした。
取り巻きに求める条件は,構築から外れたマニューラとクロバットが担っていた役割である「トリックルームの阻止」,「ルナアーラの迅速な処理」,「レックウザやカプ・コケコ,ゲンガー等の超高速のポケモンへの対応」,「置物にならずに,禁止伝説と同等の圧力をかけられる(ちなみに,クロバットは怒りの前歯や追い風,マニューラはダメ押し)」の4点に,「ガオガエンへの対応」を加えて計5点である。
まず,一番手が付けやすい「レックウザやカプ・コケコ,ゲンガー等の超高速のポケモンへの対応」に注目した。これに関しては,すぐに拘りスカーフ持ちのカプ・テテフが適任であると分かった。拘りスカーフ持ちのカプ・テテフは,グラードンやカイオーガ(拘りスカーフを持っていても上から攻撃できる),イベルタル,ゼルネアス(フェアリーオーラをタダ乗りできる)に圧力をかけられることを,第3回ポケモン竜王戦で理解していたので,試してみる価値はあると考えた。
しかし,拘りスカーフ持ちのカプ・テテフは,「トリックルームの阻止」,「ルナアーラの迅速な処理」,そして,一番の問題である「ガオガエンへの対応」が解決できないので,カプ・テテフとの相性が良く,これらの問題を解決できる(あまり仕事をさせない)ポケモンを探すことにした。
そのポケモンは,カプ・テテフと共に基本選出として選出することを考えていたため,ゼルネアス,イベルタル,カプ・テテフの3体に共通する弱点について考えてみた。単体で挙げるとすると,メガクチート,カプ・コケコ,ナットレイ,ツンデツンデ,カミツルギ,メガメタグロス(イベルタルより,素早さが速いため)等の高速高火力のポケモンと高火力の鋼タイプのポケモン,そしてガオガエンが弱点であることが分かったと同時に,ガオガエン以外のポケモンは,HP種族値がそこまで高くないことも分かった。VGC2016ルールの環境の終盤(WCS2016終了後)に,ジュニオさんや海外の方が拘りスカーフ持ちのドーブルの命懸けで,クチートやドータクン等のゼルネアスが苦手なHPの低いポケモンを強引に削る戦法を取っていたことを思い出したので,カプ・テテフと相性が良く,命懸けを覚えるPJCS2018のスイスドロー最終第7戦でWCS2018のDay1を賭けた熱い試合を行った超高速のポケモンと言えば・・・
そう,このポケモン。
また,アギルダーは,アンコールとアシッドボムを覚えることができるのが非常に優秀である。これにより,命懸け一点読みという非常にリスクがある行動は選択し辛いので,相手は,アギルダーのやることが分かっていても,防ぐことが難しい。
さらに,拘りスカーフ持ちのカプ・テテフと組み合わせることで,ルナアーラや暁の翼フォルムのネクロズマ(以下,月食ネクロズマ),グラードン,気合いの襷持ちのメガレックウザ,拘りスカーフ持ちのカイオーガ等の禁止伝説のポケモンを倒すことができたり,今後,使用者が増えるであろうと予測していた気合いの襷持ちのクロバットに仕事をさせずに倒すことができるのがとても強力であった。
- 〇 ✖
時期:2018年8月下旬(WCS2018)
自身初の世界大会は,Day1敗退に終わってしまったが,日本人への応援やVGC2018ルールの答え合わせを確認するために,Day2も会場に足を運んだ。その日のトップカットの発表を待っている間に,WCS2019についての衝撃の発表があった。その内容は,VGC2019は,「サンシリーズ」,「ムーシリーズ」,「ウルトラシリーズ」の3シリーズに区切られ,サンシリーズは,「Zクリスタルとメガストーン,藍色の玉,紅色の玉,ガリョウテンセイを覚えたレックウザ」を制限,ムーンシリーズは,「ウルトラネクロZとメガストーン,藍色の玉,紅色の玉,ガリョウテンセイを覚えたレックウザ」を制限,ウルトラシリーズは,サンシリーズやムーンシリーズでの制限を解いたルールということであった。上記の2項目の発表でも衝撃に値する発表ではあったが,自分を含め,皆さんが何より衝撃だったのが,VGC2019の最初のシリーズであるサンシリーズがWCS2018終了の翌週(2018.09.04~2019.01.08)から始まるという発表に違いないだろう(ムーンシリーズは,2019.01.08~2019.04.02,ウルトラシリーズは,2019.04.02~Worlds(WCS2019)の期間で開催される)。
今までは,4で記述した通り,前年の11月頃に新しいルールが発表されるため,世界大会終了後の約3ヶ月間は,余韻に浸るオフシーズンとして設けられていたので(なので,World Cup of VGCは毎年盛り上がりますよね),この発表は,誰もが予想だにしない事件と言っても過言ではないだろう。遂に,プレイヤーに休む暇さえも与えてくれない水準で,「VGC」というコンテンツが進歩を遂げていると実感した瞬間であった。
そして,冷静になって考えてみると,サンシリーズとムーンシリーズでは,VGC2016で中心となっていた「ゲンシグラードン」と「ゲンシカイオーガ」と「メガレックウザ」,7世代で追加された「ウルトラネクロズマ」は,使用が制限されているのに,上記の3体のポケモンと同様にVGC2016で大暴れしていた「ゼルネアス」は,何故か3つのシリーズ通して使用可能であることに会場がどよめいた(VGC2019のルールの紹介の画像にゼルネアスが一番目に使用されていたのも,今思えば皮肉でしたねw)。この発表を聞いて,サンシリーズは,使用できるポケモンの組み合わせで最もパワーの大きい「拘りスカーフ持ちのカイオーガ+ゼルネアス」を中心とした環境になるということは,誰もが予想していたであろう。
しかし,VGC2019について,引っかかることが1つある。それは,PJCS2019とWCS2019はウルトラシリーズで行われるということである。つまり,言い方が悪いが,サンシリーズとムーンシリーズで費やした時間が無駄になってしまう可能性があるということである。
このことを危惧して,ウルトラシリーズのみの考察に切り替える人もいた中,自分は,「VGC」というコンテンツを最大限に楽しみたかったことと,VGC2019の全てのシリーズの中で,サンシリーズが禁止伝説のポケモンが使えるルールで各ポケモンのパワーが一番小さいルールなので,徐々にVGC2019のダメージ感覚に慣れていこうと考えたことから,VGC2019の全てのシリーズをプレイすることを決めた。VGC2018終了後に,いきなりウルトラシリーズを考察しても,パワーが桁違いなことと,この時期のウルトラシリーズをプレイする人は少ない(レートも実装されていないため)と考えたことから,見当違いな考察が生まれてしまうのではないかと危惧したのも理由の一つである。
WCS2018が終了した翌日(2018.08.27)の現地時間の夜(日本では,2018.08.28の昼)に,PGLでもWCS2019の概要が発表された。その中で,皆さんが一番注目した内容は,PJCS2019の出場権を賭けた予選をPJCS2018と同じく計3回開催され,今回の3回の内訳が全てのシリーズで1回ずつであることも発表されたことに違いないだろう。後日(具体的な日付は忘れました),PGLからPJCS2019の出場人数もPJCS2018と同じく100人であることと,PJCS2019の出場権を賭けた3つのインターネット大会名が「2018 International Challenge November(以下,11月INC)」,「2019 International Challenge February(以下,2月INC)」,「PJCS2019予選」であること,そして,各インターネット大会の予選抜けの人数が,11月INCは30人,2月INCは30人,PJCS2019予選が40人で,PJCS2019に出場する100人を選ぶことが発表され,「2年連続で予選を抜けて,PJCS2019に出場する!」という感情を駆り立てた。PJCSに出場するまでは,1回だけでもPJCSやWCSに出場できれば,結果はどうあれ,思い残すことは無いだろうと考えていた。しかし,自分がその立場を経験したからこそ,高レベルな対戦ができる権利を易々と誰かに受け渡すことに,強い違和感を覚えたので,各シリーズの考察を煮詰め切るのに,多少の不安があったが,1発(ウルトラシリーズ)勝負に賭けるよりはリスクが低いと考え,より一層,現時点でのルール(サンシリーズ)だけに集中しようと決意した。 -
「5」で,サンシリーズに集中するとは言ったものの,WCS2018が終了した次の週末に南白オフが控えていたので,「4」で考察したカプ・テテフ+アギルダー入りのゼルネアス+イベルタル構築で臨もうと考えた。しかし,ある程度の試運転をしてみたところ,基本的にアギルダーは,カプ・テテフとセットで選出するするため,カプ・テテフ+アギルダーの組み合わせに劣らないような裏選出の2体を探す必要があった(現段階では,先発カプ・テテフ+アギルダーの選出を必ずと言って良い程,警戒されることと,ウルトラシリーズの知識が不足していたため,選出を深く考えることを諦めて,上記の選出に依存している傾向があったため)。
そこで,この構築の核であるゼルネアスを徹底的に立てるプランを作ることができれば,裏選出への信頼が高まると考えた。ゼルネアスをサポートする方法として,PJCS2018でじーんさんやYTさんが使用されていたガルーラとガオガエンの猫騙しを覚えるポケモンを2体組みこみ,積み技やS操作のサポートをする構築が強かったことを思い出した。
自分が決めた謎ルール(下記の記事の最後に詳しく記述しています)により,VGC2018では,ガオガエンを使用することができなかったが,VGC2019でやっと,ガオガエンを使用することができるので,最後の2枠にガルーラとガオガエンを採用した。基本選出で,頭を悩ませていた鋼タイプへの対処やメガシンカ枠,そして,Zワザ枠を全て満たせることができたので,逆に,出来過ぎかなと感じてしまった。さらに,ガオガエンに蹴手繰り,ガルーラに炎のパンチと手助けを採用し,鋼タイプに対しての鬼のメタを施して,南白オフに臨んだ。
南白オフの結果は,予選ブロック4勝3敗の予選落ちで,負けの内訳は,トリックルームディアルガ+クチートが無理,択負け,急所(こちらも運で1勝しているので,文句は言えない)だった。しかし,この構築で負けたことより,勝ったことに手応えを感じてしまう結果となり,この段階では,カプ・テテフ+アギルダーの組み合わせが自分に合っていないと気付くことができずに,がにゅーオフでも同様の構築を持ち込むことになってしまった。
自分が気付くことができた南白オフでの唯一の反省として,先発カプ・テテフ+アギルダーを繰り出したとき,相手の一方のポケモンを必ずフリーにしてしまうので(この時点で,さっさと諦めて自分に合っていないと気付いてくれ),先発カプ・テテフ+アギルダーの初手の動きで択負けをしても中間択があれば(択負けを考えている時点で,さっさと諦めてくれ),一方的に不利な展開にはならないと考えた。
南白オフ終了後に,同じ鹿児島勢のさきえさんにそのことを話してみたところ,「アギルダーに虫の抵抗を採用してみてはどうか。」という意見を頂いた。今まで,自分はカプ・テテフ+アギルダー構築に対し,相打ち以上の結果で相手のポケモンを確実に倒して,数的有利を取り,裏のエースに繋げて制圧する認識だった。しかし,アギルダーやカプ・テテフが場から離れた後に,相手の禁止伝説のポケモンとジオコントロール使用前のゼルネアスの対面ができてしまい,この状況からジオコントロールを使用しなければならないことが懸念事項だった(イベルタルの追い風や悪の波動Zでゼルネアスをサポートすることができるが,たいていの場合,アギルダーまたはカプ・テテフのどちらかが残った状態で,ゼルネアスまたはイベルタルを繰り出すので,2体が場に揃う間に相手に猶予を与えてしまう)。
そこで,アギルダーに虫の抵抗を採用することで,具体的な例として,モロバレル(ドーブル)+ゼルネアスやカイオーガ+クロバットの並びへの択が不要となり,かつ,特攻を下げることで,ゼルネアスのジオコントロールの起点が作りやすくなる(クチート以外の物理ポケモンは,イベルタルで対応することができる)。つまり,先発カプ・テテフ+アギルダーで相手のポケモンを倒さない選択肢を取れることが何よりも大きく,カプ・テテフ+アギルダー構築への認識が変わった瞬間であったので,さきえさんには本当に感謝している。 -
( ) →
時期:2018年9月下旬(第37回がにゅーオフ)
「6」を踏まえて,がにゅーオフや11月INCに向けての考察を開始した。サンシリーズは,「モロバレルの処理が厄介である」と皆さんが口を揃えて言う程,モロバレルが一番輝くルールであると考え,メガストーンの使用が禁じられているということもあり,南白オフで使用したガルーラの枠をモロバレルに変更したが,防塵ゴーグル持ちのツンデツンデに勝てない欠陥がある構築だということに,がにゅーオフに向かう新幹線の中で気づいた。しかし,残された時間がないことと,最悪マッチングしなければ良いと考え,がにゅーオフに臨んだ。
がにゅーオフの結果は,予選ブロック4勝3敗の6すくみで予選落ちで,負けの内訳は,グラードン+ゼルネアス+ドータクンに為す術無く負け,拘りスカーフ持ちカイオーガの扱いが上手くて負け,考慮外の調整に崩されて負けだった。予選落ちしたこともショックであったが,この大会で準優勝のバルドルさんが,防塵ゴーグル持ちのツンデツンデを使用されていたことが何よりもショックであり,カプ・テテフ+アギルダー構築に暗雲が立ち込めたが,バルドルさんと3位のウォルフォンさんがゼルネアス+イベルタル構築を使用されていたので,悲観することばかりではなかった。後日,バルドルさんのブログにがにゅーオフで使用されたゼルネアス+イベルタル構築の記事が公開されたので隈無く拝見し,同じ構築を使用している身として,参考になることが3点あった。
7-1 イベルタルについて
自分は,このルールで使用率の高いガオガエンの威嚇による妨害を嫌い,イベルタルの技構成を「悪の波動,デスウイング,追い風,守る」の特殊型をがにゅーオフで使用していた(カプ・テテフを同じ構築に採用していたことも要因)。
しかし,バルドルさんの記事で記述されているように,サンシリーズでは,叩き落とすが「5」で記述した持ち物の制限により,ほとんどの場合で追加効果が発動する大変入れ得な技であることを自身のがにゅーオフでの対戦でも痛感した(イベルタルの攻撃をギリギリで耐えられて,ピンチベリーを使用される場面が多々あった)。また,そもそもガオガエンをイベルタルの役割対象にするのが間違っているということを今更ながら理解した。
7-2 拘りスカーフ持ちのカイオーガへの立ち回りについて
バルドルさんのがにゅーオフ準々決勝の対戦を観戦したところ,相手の拘りスカーフ持ちのカイオーガに対して,バルドルさんは拘りスカーフ持ちのカプ・コケコを用意されていたが,拘りスカーフ持ちのカイオーガの隣に猫騙しや怒りの粉(この指とまれ)搭載のポケモンがいると,厳しい立ち回りを強いられる印象を強く受けた。
がにゅーオフの2次会で,バルドルさんにそのことについて伺ってみたところ,序盤は,どうしても相手の奇襲に対して,受けに回らないといけないため,やはり厳しいという返答が返ってきた。
7-3 ツンデツンデについて
このルールで最も対策すべきポケモンであるゼルネアスに対して,非常に強いポケモンである。ゼルネアスのHPを大きく削ることができるジャイロボールを覚えることはもちろんのこと,トリックルームも覚えるので,2連守るという甘えた行動も許さない。また,ガオガエンにも強いため,ゼルネアス+イベルタル構築にツンデツンデは採用し得であることを強く理解した。
以上より,イベルタルの技構成を「叩き落とす,不意打ち,追い風,守る」の物理型に,そして,自分の考察不足により,何も考えずに火力と素早さに振り切っていた努力値配分もバルドルさんが使用されていた努力値配分に変更した。
また,自分の現在の構築にツンデツンデを採用することは確定したが,消去法でカプ・テテフかアギルダーのどちらかのポケモンを変更しないといけない。アギルダーは,単体だとあまりも役割が限定的であり,カプ・テテフは,イベルタルの不意打ちやガオガエンの猫騙しとアンチシナジーである(アギルダーと組んでいた影響で,上記のデメリットはあまり感じなかった)。つまり,カプ・テテフ+アギルダーのコンビが解散した今,2体同時に変更する必要がある。
よって,最後の1枠に拘りスカーフ持ちのカイオーガに強いポケモンを入れなければならないが,バルドルさんが使用されていた拘りスカーフ持ちのカプ・コケコを自分が扱える自信は無く,どうしたら良いのか分からず,途方に暮れていた。 -
バルドルさんがTwitterで,ゼルネアス+イベルタル構築にルンパッパを採用して,WCSレートでレート1900台に乗せたつぶやきをしたのを見て衝撃が走った。今まで,ルンパッパはカイオーガとセットで採用して,特性のすいすいを生かす認識であった。つまり,雨が降っていない状態でのルンパッパの単体性能を全く評価していなかった。しかし,ルンパッパは猫騙しを覚えるので,雨が降っていなくても,南白オフで使用したガルーラ+ガオガエンのようにルンパッパ+ガオガエンで,ゼルネアスのジオコントロールやイベルタルの追い風,ツンデツンデのトリックルームのサポートがしやすくなる。それに加えて,がにゅーオフ3位のウォルフォンさんのゼルネアス+イベルタル構築にもルンパッパが採用されていらっしゃったので,最後の1枠にルンパッパを採用することが確定した。
「1」~「8」の文章を一言でまとめると,自分はサンシリーズで,バルドルさんとウォルフォンさんのゼルネアス+イベルタル構築を融合した構築を使用しました。お二方には,多大なる感謝の意を表します。
以下,使用した構築とその解説です。
ルンパッパ
性格:控えめ
実数値:156-81-90-156-120-122
努力値:4-0-0-252-0-252
特性:すいすい
持ち物:命の珠
技構成:草結び 熱湯 冷凍ビーム 猫騙し
配分の理由
H:命の珠の反動を意識したため。
C:カイオーガやガオガエン,ツンデツンデ等のHPを出来るだけ削りたいため。
S:特性のすいすいが発動している状態で,拘りスカーフ持ちの最速カプ・テテフ(持ち物込みで,実数値241)まで抜くのなら,準速の方が良いため。
控えめ:ミラーの同速勝負に負けるより,カイオーガに草結びを耐えられる方が嫌なため。
命の珠:バルドルさんは,達人の帯を持たせていらっしゃったが,個人的な考えとして,カイオーガやガオガエン,ジガルデ等のHPを出来るだけ削りたいため,こちらを採用。カプ・テテフやソルガレオ,ゼルネアスへ与えるダメージも大きく変化する。確かに,猫騙しでHPが削れてしまうのは痛いが,実は,命の珠補正の猫騙しのダメージがとても重要である(詳しくは,後述)。
すいすい:カイオーガの上から確実に草結びを打つため。
草結び:バルドルさんは,カプ・レヒレを意識してエナジーボールを採用されていらっしゃったが,カイオーガを意識する方が優先だと考えたため,こちらを搭載。確かに,ゼルネアス+イベルタル構築は,カプ・レヒレの処理に手間取るが,カプ・レヒレを無視すれば良いと気付いたため,意識する必要が全くない(詳しくは,後述)。
熱湯:ガオガエンやツンデツンデ,ソルガレオに確実に水技を当てたいため,ハイドロポンプはNG。追加効果の火傷も評価。
冷凍ビーム:ジガルデやトルネロス,カミツルギ,モロバレル等のこちらのゼルネアスやガオガエンに圧力をかけてくるポケモンのHPを大きく削ることができるため。読まれにくいのも評価。
猫騙し:このポケモンの最大の採用理由。カイオーガがいない構築や相手がカイオーガを選出していないときにも,最低限の仕事が出来る。
この構築が抱えていた「拘りスカーフ持ちのカイオーガ」,「ガオガエン」,「ツンデツンデ」に強いことでも十分なのに,猫騙しで隣のポケモンをサポートすることが出来るとても器用なポケモン。その強さをいち早く見いだしたバルドルさんとウォルフォンさんの考察力の高さには,まだまだ敵いませんね。
性格:生意気
実数値:219-x-105-105-132-31
努力値:236-x-116-0-156-0 (S個体値0)
特性:再生力
持ち物:レッドカード
技構成:草結び イカサマ キノコの胞子 怒りの粉
配分の理由
H:特性の再生力を意識して,3n。
B:余り。
D:11n。物理耐久の脆さを懸念して,実数値を143にはしなかった。
※モロバレルの使用経験が浅かったので,VGC2018ルールの有名な調整を使用。
生意気:トリックルーム中のドータクンの上からキノコの胞子やイカサマを打ったり,ツンデツンデのジャイロボールのダメージを抑えるため。
レッドカード:この持ち物のことを紹介のために,この記事を書いたと言っても過言ではない程,とても重要な持ち物。個別解説で詳しく記述する。
再生力:モロバレルには,1試合で出来るだけ沢山の仕事をしてもらいたいため。
草結び:トリックルーム中のカイオーガを上から大きく削る技。ツンデツンデやグラードンの打点になるのも大きい。
イカサマ:ルナアーラやネクロズマ,ソルガレオ等の抜群で入るポケモンやディアルガやカミツルギ,ナットレイ等の草結びまたはクリアスモッグではダメージが入らないポケモンに打つ技。イベルタルのダークオーラの恩恵を受けるのも評価。
キノコの胞子:7世代で見向きもされなかった防塵ゴーグルが注目されたと言っても過言ではない技。誰もが対策を施しているため,裏目になりやすい技だと思われるが,イベルタルとガオガエンの叩き落とすで防塵ゴーグルを落とせることも加えて,活躍する場面は多い。
怒りの粉:ゼルネアスのジオコントロールやイベルタルの追い風,ツンデツンデのトリックルームのサポート,そして,相手のゼルネアスの攻撃を確実に引き寄せて,レッドカードを発動させるために必要な技。
この構築のMVP。ウォルフォンさんとがにゅーオフで対戦していなければ,レッドカード持ちのモロバレルに辿り着くことが出来なかったので,本当に感謝しています。
レッドカードは,VGC2016ルールの終盤で,ジオコントロール使用後のゼルネアスを止める手段の一つとして流行したので,当然,皆さんもこの持ち物を認知していたはずです。しかし,7世代でカプ・テテフ,ルナアーラ,ネクロズマが登場したことにより,採用に踏み切ることが出来なかったと思います。
構築経緯の「7」より,サンシリーズは,モロバレルの早急な処理が求められるルールであるので,モロバレルのHPを大きく削れるポケモンを構築に少なくとも1体は採用しなければならないと考えます。モロバレルの弱点は,炎,氷,飛行,エスパーの4つだが,炎は使用率の高いカイオーガの特性の雨降らしにより,弱められるので不適,氷は基本タイプ不一致技がほとんどで,倒しきれないので不適,飛行は高威力の技を覚えるポケモンの数値が低く,倒しきれないので不適です。以上より,残ったエスパー技でモロバレルを倒さなければならないということが分かります。
裏を返せば,モロバレルにエスパー技を半減するウタンの実を持たせておけば,ほとんどの対戦で,モロバレルが自身の役割を果たすこと出来るということです。つまり,モロバレルにウタンの実を持たせた方が汎用性が高いので,多少のリスクのあるレッドカードは,自然と皆さんの候補から外れていったと考えます。
では,何故自分は,モロバレルにウタンの実を持たせなかったのかというと,この構築にイベルタルとガオガエンの悪タイプのポケモンを2体採用していることが大きな理由です。皆さんのほとんどの構築にもガオガエンが採用されていると思いますが,ガオガエンが盤面に出ているときに,ガオガエンの隣にエスパー技の一貫ができてしまうことに,もどかしさを覚えた人も多いでしょう。しかし,自分の構築は,上記の2体を含め,ツンデツンデも採用しているため,サンシリーズの構築では珍しい,エスパー耐性のある構築です。よって,エスパー技に対して,交代での受け出しで切り抜けられるため,モロバレルにウタンの実を持たせるのは,過剰なメタであると考えました。
ウタンの実より良い持ち物は何かを考える前に,まず,モロバレルの一般的な技構成(草結び,クリアスモッグ,キノコの胞子,怒りの粉)のクリアスモッグについて違和感を覚えました。
突然ですが,「皆さんは,何でモロバレルにクリアスモッグを採用しているのですか?」
クリアスモッグの攻撃対象のほとんどがゼルネアスであることは自明なので,ゼルネアスはジオコントロールの使用前後において,特に警戒するはずです。上述より,サンシリーズでモロバレルの対策は必須級であるため,ゼルネアスとモロバレルが上手く対面したとしても,ゼルネアスが守りながら,隣にモロバレルに強いポケモンを繰り出されたら,次のターンに,何もさせてもらえずに倒されてしまうのは,最も恐れるべき事態です(サンシリーズでモロバレルにクリアスモッグを採用している構築で,説得力のある説明ができているのは,勝海さんのルナアーラ+カイオーガ構築だけだと思います)。以上より,モロバレルに求められる役割は,相手の思考の外からのジオコントロール使用後のゼルネアスの排除です。上記より,相手の思考からレッドカードの存在が抹消されているため,まんまと罠にハマります。
VGC2016ルールでは,レッドカードはゼルネアスの対策だけに止まっており,汎用性が高い持ち物とは言えませんでしたが(それほどゼルネアスが強かった証拠ではありますが・・・),サンシリーズでは,汎用性の高い持ち物にグレードアップします。
例えば,相手に追い風またはトリックルームを上手く決められて,カイオーガの潮吹きやグラードンの断崖の剣等で一掃されるピンチを,レッドカード持ちのモロバレルで攻撃を受けて退場させることで,こちらのプランを立て直せる猶予が1ターン発生します。「守る→レッドカードで相手のエースのポケモンが退場→エースのポケモンが再登場→守る」でトリックルームのターンが切れますので,禁止伝説のポケモンが使用できるルールで,この1ターンがとても大きいです(追い風なら,さらに1ターン余裕ができますね)。また,同様の動きを利用して,ツンデツンデのトリックルームの使用にも役立ちます。
汎用性を考えると,モロバレルの行動に対応できるポケモンは,相手の構築に1・2体しか採用できなく,レッドカードで繰り出されたポケモンがモロバレルに有効打がないことがほとんどなため,こちらのプランが通りやすくなり,ゼルネアスやカイオーガ,グラードン入りの構築への勝率が跳ね上がりました。
以上より,モロバレルにクリアスモッグは不要だと判断し(もちろん,あるに越したことはないですが・・・),防塵ゴーグル持ちの黄昏の鬣フォルムのネクロズマ(以下,日食ネクロズマ)に何もできなかったのがもどかしかったので,クリアスモッグの代わりの技として,イカサマを採用してみたところ,イベルタルの特性のダークオーラの補正も加わり,こちらも見事にハマり,レッドカードが自分のゼルネアス+イベルタル構築の完成度を格段に上げたのは言うまでもないでしょう。
最後に,上記より,個人的にモロバレルにレッドカードを持たせる選択肢がある構築は,ゼルネアス+イベルタル構築のみだと考えています。
ゼルネアス
性格:控えめ
実数値:221-x-115-198-118-135
努力値:156-x-0-228-0-124
特性:フェアリーオーラ
持ち物:パワフルハーブ
技構成:ムーンフォース マジカルシャイン ジオコントロール 守る
配分の理由
バルドルさんの配分を拝借しました。ありがとうございました。
C:11n。H146D95のカプ・コケコをフェアリーオーラ補正のムーンフォースで確定。H175D161のカイオーガをフェアリーオーラ補正のC+2ムーンフォースで確定。
S:最速ルンパッパ(S実数値134)抜き,S+1で最速カプ・コケコ(S実数値200)抜き。
控えめ:C183ゼルネアスのフェアリーオーラ補正のC+2ムーンフォースを耐える調整を崩すため。
パワフルハーブ:ジオコントロールを1ターンで使用できるため。
フェアリーオーラ:この特性しかないため。特性発動順で素早さを判断できるのが大きい。
ムーンフォース:フェアリー技の中で最大の威力の技。追加効果も評価。
マジカルシャイン:フェアリー技の中で最大の威力の範囲技。
守る:ジオコントロールを使用しやすい環境を作りやすくするため。また,ヘイトを集めやすいポケモンであるため,ジオコントロール使用後の露骨な集中攻撃を防ぐため。
ゼルネアスの性格を臆病で採用する考えとして,「相手のゼルネアスとの同速勝負に負けない」ことが最も多く挙げられますが,そもそも同速勝負で勝たないと勝てない構築は欠陥であると考えています。また,性格が臆病のゼルネアスを意識した調整が蔓延していることも加わり,ゼルネアスの性格を控えめしか使用できなくなりました。
また,控えめのメリットとして,特性順で相手のゼルネアスの調整が判断できることがあります。相手のゼルネアスが遅いなら,こちらのゼルネアスが有利ですし,速いなら,互いのジオコントロールの使用を誘発させて,次のターンにレッドカード持ちのモロバレルを相手のゼルネアスの攻撃に合わせて退場させて,一方的な試合展開にすることができます。
性格:陽気
実数値:201-175-115-x-127-166
努力値:0-188-0-x-68-252
特性:ダークオーラ
持ち物:黒い眼鏡
技構成:叩き落とす 不意打ち 追い風 守る
配分の理由
バルドルさんの配分を拝借しました。ありがとうございました。
A:余り。
D:C200カプ・テテフのムーンフォースを確定耐え。C222カイオーガの雨かつダブルダメージ補正の潮吹きを確定耐え。C147カプ・コケコのエレキフィールド補正の10万ボルトを13/16で耐え。
S:最速カプ・テテフ(S実数値161)まで抜くのなら,最速の方が良いため。
陽気:最速カプ・テテフ(S実数値161)を抜くため。
黒い眼鏡:叩き落とすでH145B95のカプ・テテフを確定,ガオガエンの猫騙し+イベルタルの追加効果補正の叩き落とす+不意打ちでH145B106のカプ・コケコを超高乱数で倒すため。耐久調整が崩れる命の珠はNG。叩き落とされたとき,相手が拘り眼鏡と見間違えるのを期待して,強面プレートではなく,こちらを採用。
ダークオーラ:この特性しかないため。特性発動順で素早さを判断できるのが大きい。
叩き落とす:ほとんどの場合で追加効果が発動する優秀な技。追加効果補正で投げつけるを除いて,悪技の中で最高威力(威力97)の技。
不意打ち:優先度+1で打つことが出来る汎用性の高い技。
追い風:主に,相手の追い風や拘りスカーフ持ちのポケモンへの切り返しに使用する技(攻めの技より守りの技という認識)。
守る:ほとんどの構築に対して,イベルタルが居座り続けているだけで圧力になるため(不意打ちの存在が大きい),大切に扱っていきたいため。また,追い風を使用する環境を作りやすくするため。
この構築は,サイコフィールドを消すポケモンがいないため,カプ・テテフの処理を大方このポケモンに任せることになります。特性のダークオーラがとても強力で,半減のポケモンにも無視できないダメージが入るため,場合によっては,カプ・コケコも強引に倒すことができるのは非常に頼もしいです。
また,飛行タイプでもあるので,相性が悪いグラードン入りの構築の突破口となり得ます。
性格:慎重
実数値:200-136-111-x-154-84
努力値:236-4-4-x-236-28
特性:威嚇
持ち物:フィラの実
配分の理由
H:自然の怒りや怒りの前歯2回で確実にフィラの実が発動する4n。
A:余り。
B:余り。
D:C183のゼルネアスのフェアリーオーラ補正のC+2ムーンフォースを確定耐え。
S:最遅カイオーガ(S実数値85)-1。ミラーで出来るだけ上から猫騙しや蜻蛉返りで逃げられる前に叩き落とすを打ちたいため。
慎重:C183のゼルネアスのフェアリーオーラ補正のC+2ムーンフォースを耐えるため。
フィラの実:ゼルネアスやイベルタル,ツンデツンデのサポートのために,グラードンの断崖の剣,ツンデツンデの岩雪崩に対して,受け出しをしなければならない場面があるため。性格が勇敢や生意気,呑気の可能性が消えるマゴの実はNG。
威嚇:構築全体の物理耐久を上げるため。特性発動順でミラー対面での素早さを判断できるのが大きい。
フレアドライブ:モロバレルやゼルネアスのHPを大きく削るため。フィラの実との相性も評価。
叩き落とす:ゼルネアス+イベルタル構築は,相手の構築(主に,ゼルネアス入りの構築)によっては,イベルタルを選出しないこともあるので,イベルタルを選出していなくても叩き落とすを使用したいため。叩き落とすを使用できるポケモンを増やすことで,ゲームプランを広げることができるため。
蜻蛉返り:ガオガエンの素早さが遅いことを利用して,相手のポケモンの攻撃を受けてから,後続のポケモンに交代したいため。後出しでの交代になるため,交代が裏目になることが少ないのも評価。
猫騙し:ジオコントロールや追い風,トリックルームのサポートに必要な技。
当時,S実数値84のガオガエンはそこまで流行していなかったので,ガオガエンの処理に手間取るこの構築にとって,とても助かりました(改めて,情報封鎖は怖いですねw)。
VGC2019ルールで,初めてこのポケモンを使用しましたが,滅茶苦茶強いですね(当たり前)。
性格:勇敢
実数値:167-201-231-x-123-16
努力値:244-252-0-x-12-0 (S個体値0)
特性:ビーストブースト
持ち物:防塵ゴーグル
技構成:ジャイロボール 岩雪崩 トリックルーム 守る
配分の理由
バルドルさんの配分を拝借しました。ありがとうございました。
H:実数値167と168では,ダメージの乱数の変化がないため。
A:ゼルネアスやグラードン,ガオガエンのHPを出来るだけ削りたいため。
D:余り。
勇敢:ジャイロボールのダメージを上げるため。トリックルームが使用できる場面を増やすため,攻撃力が上がる「寂しがり」より物理耐久の方を優先した方が良いと考え,こちらを採用した。
防塵ゴーグル:モロバレルのキノコの胞子に対して受け出すため。
ビーストブースト:この特性しかないため。この個体では防御が上がる。
ジャイロボール:ツンデツンデのあまりもの遅さに,ほとんどのポケモンに高威力のダメージを与えられるとても相性の良い技(S実数値96以上のポケモンに最高威力150)。
岩雪崩:ガオガエンやモロバレルのHPを確実に削りたいため,ストーンエッジはNG。追加効果も評価。
トリックルーム:自身はもちろんのこと,モロバレルやガオガエンの行動回数を増やしたり,相手の追い風やトリックルームに対して切り返すことが出来る技。
守る:4倍弱点(地面,格闘)が2つあるポケモンであり,大切に扱っていきたいため。
サンシリーズで使用率が高いゼルネアス+ガオガエン+モロバレルの組み合わせに強いだけでも十分なのに,S操作もできる欲張りなポケモン。トリックルーム中は数値の高い怪物に化けるため(素早さの数値の低さが攻撃面,耐久面を強化する結果になっています),相手としては,何としてでもツンデツンデのトリックルームを防ぐ構えを見せているところに,レッドカード持ちのモロバレルが刺さるため,モロバレルとの相性は抜群です。
選出(前2体が先発,後2体が後発)
基本選出
A ( or )
猫騙しでプランを組み立てることが理想です。カプ・テテフやアマージョ等の猫騙しや不意打ちを妨害する構築に対しては,レッドカード持ちのモロバレルを上手く合わせて相手のプランが崩壊している間に,自分のプランを組み立てていきます。
B ( or )
トリックルーム中のガオガエンやツンデツンデ,モロバレルで削っていき,ゼルネアスやイベルタルで詰めることが理想です。レッドカード持ちのモロバレルのお蔭で,ツンデツンデのトリックルームがほぼ成功します。
vs
( or )
相手の各先発に対する行動
vs
ルンパッパはガオガエンに猫騙し,ゼルネアスはジオコントロールを選択します。次のターンに,ルンパッパをモロバレルに交代,命の珠持ちのA-1の猫騙し+フェアリーオーラ補正のC+2のムーンフォースで高乱数でH200B111D154のガオガエンを倒せるので,ゼルネアスはガオガエンにムーンフォースを選択し,レッドカードが発動すれば勝ちです(このターンにレッドカードが発動しなくても,その次のターンにモロバレルが怒りの粉を選択すれば良いだけの話です)。急所やムーンフォースの追加効果を考えると,ゼルネアスを守らせながらモロバレルを繰り出す方が安全ですが,ガオガエンの吠えるを考えると,その選択はできません(カイオーガ+ゼルネアス構築のガオガエンに吠えるを搭載している人は,DAIKIさんの記事を拝見していないのですか?)。
vs
猫騙しと挑発をゼルネアスに重ねてくるので,ゼルネアスを守らせながら,ルンパッパはガオガエンに熱湯を選択します。次のターンに,ゼルネアスに挑発を打たれてしまう可能性がありますが,相手はこのターンにトルネロスとガオガエンを倒されてしまうのを恐れて追い風を選択してくることが多いので,ゼルネアスはジオコントロール,ルンパッパは再びガオガエンに熱湯を選択して勝ちです。
vs
ルンパッパはカミツルギに猫騙し,ゼルネアスはジオコントロールを選択します。次のターンに,ルンパッパの熱湯の追加効果や冷凍ビームをカミツルギが受けることを恐れて,相手のゼルネアスがマジカルシャインを選択することが多いので,ゼルネアスを守らせながら,ルンパッパをモロバレルに交代して,レッドカードが発動すれば勝ちです。レッドカードが上手く決まっても,相手の後発にカイオーガがいれば択になりますが,SNOWさんの記事を拝見する限り,強い人はカイオーガを選出してこないので大丈夫です。
vs
一番面倒な対面です。基本的に相手に初手のジオコントロールを誘発できるので,序盤にレッドカードを発動させて,モロバレルでカイオーガやゼルネアスと殴り合うプランを取るので,特性の再生力が何回発動できるかが鍵です。また,モロバレルのHPを大きく削ることができるルンパッパの冷凍ビームが輝くマッチアップです。
vs
カプ・テテフ入りのグラードン+ゼルネアス構築は,ほぼ諦めています。
vs
悪魔のキッスは当たらないことで対策しています(PJCS2019の出場権をかけた予選大会であまりにも不安定であるため)。
vs
( or )
相手の先発は,ガオガエン+カプ・レヒレが多いので,木の実を叩いた後に,カプ・レヒレの隣を永遠に攻撃していれば勝てます(ルンパッパにエナジーボールを搭載していないのは,このためです)。
vs
追い風: ( or )
追い風,トリックルーム共に,レッドカード持ちのモロバレルを繰り出すタイミングが鍵となります。速いガオガエンやルナアーラにナモの実やサイコシードを持たせている構築がほとんどで,ルナアーラのS操作は確実に決められてしまうので,序盤はルナアーラの隣のポケモンのHPを削っていき,1回目のS操作を凌いでから,2回目のS操作を防ぐプランを取ります。
vs
こちらもモロバレルが輝くマッチアップです。トリックルーム中にイベルタルの不意打ちで日食ネクロズマの弱点保険を発動させて,モロバレルのイカサマで倒すプレイングもできます。
vs
相手が勝手に雨を降らしてくれるので,ルンパッパも殴り合いに参加することができます。
vs
トリックルーム中のガオガエン+ツンデツンデ+モロバレルで削りながら,ゼルネアスで締めるプランを取ります。
vs
( or )
ゼルネアスのジオコントロールを強引に通さなければ,勝てない厳しいマッチアップです。イベルタルとガオガエンで突破口を開いていきます。
vs
追い風中のカイオーガだけが負け筋なので,こちらも追い風を上手く合わせて,ゼルネアスで一掃していきます。
vs
2回目のトリックルームを阻止するために,序盤に持ち物を叩き落とし,ゼルネアスで一掃するプランを取ります。
vs
( or )
厳しいマッチアップです。何としてでもゼルネアスのジオコントロールを通すプランを取ります。
vs
ホウオウの守るの搭載率が少ないことを利用して,序盤にイベルタルでホウオウのHPを大きく削っていきます。カイオーガは,モロバレルのレッドカードで上手く退場させます。
vs
モロバレルが輝くマッチアップのなので,モロバレルのHP管理に気を付けます。
vs
ガオガエンとルンパッパの猫騙しで,イベルタルの追い風とゼルネアスのジオコントロールを通していきます。厳しいマッチアップです。
vs
ガードシェアは確実に決められてしまうので,ラッキーが小さくなる前に,進化の奇石を叩き落として,C+6のゼルネアスとラッキーの対面を作るプランを取ります(このマッチアップのみ,モロバレルにクリアスモッグが欲しいですね)。
成績
・2018 International Challenge November
メイン:レート1800(33-11)
サブ:レート1818(28-5)
〇〇〇〇〇|〇✖〇✖〇|〇〇〇〇✖|〇〇〇〇〇|〇〇〇〇〇|〇✖〇✖〇|
〇〇(1808)〇(1818)
・US・UMリーグ シーズン13 WCSレート 7位(レート1866)
S13WCSレート最終7位でした!
— コウヘイ (@keima1212ab) January 8, 2019
勝率はあまり高くありませんが、XY構築で有終の美を飾ることができて嬉しいです! pic.twitter.com/r83NEhIFxt
感想
・自分の構築では珍しいことに,11月INCまでに完璧に仕上げることができたのにも関わらず,負けることが怖くて,あと1戦潜ることができなかった自分の心の弱さを非常に後悔しています。
・マッチングした対戦相手のレートの最高が1780台(1月INCの対戦相手のレートの最高が1735)だったことと,禁止伝説のポケモンが使用できるルールは,PJCS予選のボーダーが高めになるというVGC2016の経験から,冷静になって考えてみると,潜るべき理由は確かにありました。
・当時,ムーンシリーズとウルトラシリーズの勝ち方のビジョンが全く見えてなかったので,サンシリーズでPJCS予選を抜けられなかったことに焦りを覚えていました(正直,この時点でPJCS2019の出場は無理だと考えていました)。
Special Thanks
・ゼルネアス+イベルタル構築の礎を築いて下さったバルドルさん。
・モロバレルにレッドカードを持たせる発想を与えてくださったウォルフォンさん。
・性格が陽気のイベルタルを交換して下さったさきえさん。
・モロバレルを下さったぺいさん。
・ツンデツンデを交換して下さったナオさん。
ここまで見て下さってありがとうございました。